企業における効果的な安全運転対策  〜何をやれば事故が減るか〜

株式会社 ジャムス アウトソーシング事業部   外谷 敬一

目的
交通事故の損害は医療費、物損、ビジネスチャンス喪失、保険料のアップ等、様々な形で現れる。しかし、これらのコストは全て、二次的なものである。最も重要なことは人身事故であり、人命の損失である。安全運転の目的は社員と社員の家族の命を守ること、そして地域社会の安全に貢献することである。
この目的が曖昧になると、ドライバーは絶対に協力しない。本社からの押し付けではなく、ドライバー一人ひとりが「やろう」という意識を持たなければ成功しない。

最初に覚悟を決める(→実はこれが一番大事)
事故防止に特効薬はない。従ってあらゆることを、根気よく、粘り強くやっていかなければならない。今まで安全意識があまり高くなかった企業は、安全意識を必要なレベルまで引き上げるには、少なくとも3年はかかる。
とかく、本業から外れたところで、安全活動が一人歩きしがちになるが、全社員が生活や仕事のベースが安全なのだという意識をもたなければ、絶対に上手くいかない。

そのためには担当者の真剣さ、我慢、しつこさが必要になる。直ぐには意識は変わらないが、社員にとっては「自分達のために、あの担当者があれほど一生懸命やっている。自分達が変わらなければ、絶対に事故はなくならない。」というところまで、いけば第一ステップはクリアです。
第2ステップはそれが、風土、文化として定着すること。第3ステップは、企業の取組が、社会に対し貢献すること、もしくは○○会社と言えば、安全優良会社という社会的知名度を上げる事になる。

トップの認識と関与
事故撲滅に向けた取組は重要な経営問題の一つとして位置付けられなければならない。トップの意気込みが十分に伝わると、安全の優先順位が企業内で上がる。このことは以後、様々な取組を行なう上で、有利に働く。

メッセージ
インパクトを考え、全体会議、ビデオ、通達、のぼりなど。その後は定期的に更新して、いつも社内の目に付くところに、メッセージが伝わるものを置いておく。一発花火にならないように工夫を凝らす。

営業部門の意識改革
仕事と安全を天秤にかける傾向が必ずある。(例:アポにおくれそうだから、スピード違反をする)
しかし、事故のリスクの高さおよびそれに伴う損失のデータをもとに、営業のトップを口説き落とさなければならない。
用意する資料は、社内リスクマップ、事故の直接、間接損失のシミュレーション(過去の事故実績に基づいたもの)、人にもよるが、コストで示したほうが、納得して頂きやすい。

トップが承認したら、直ぐに具体的行動に取り掛かる。鉄は熱いうちに

組織の作り方
組織は多くとも10人くらい。現場のドライバーやマネージャーも必ず入れる。地理的な要因も考慮する(本社が東京なら関東のみ)。本社からは必ず営業トップ。管理部門部長、研修部、総務、人事をメンバーに入れる。
下部組織として、各支店にサブメンバーを配置する。安全運転管理者とダブってもいいが、一般的にマネージャーは忙しいため、一般社員がメンバーになってもよい。選定の仕方は、熱意がある、や、事故を起こしたもの(ハイリスク)から選び、支店の事故に責任を持たせる。

最初は、メンバーになることに抵抗を感じるものが多いと思うが、彼らがモチベーションとプライドを持てるような、インセンティブを会社が用意する。(評価や、社内紹介、インタビュー)
また、実績をあげることにより(事故を削減すること)、メンバーであることのプライドを持つようになる。出来れば、メンバーは毎年変更する。

組織の役割
定期的に事故のレビューを行い、対策についてディスカッションする。会議での決定事項は、全てに優先する権限をもたせる。
事務局が出したたたき台をもとにシャンシャン会議をしても意味がないし、鶴の一声でもいけない。立場が違う各メンバーが自分の意見を戦わせる場にしなければならない。ただし、目的を見失ってはいけない。

組織(会議)は戦略、戦術を練る機関、運用は事務局と分けて機能させる。

それぞれの役割
組織本部の責任
組織本部は全社の事故に対して責任を全ておう。そのため、費用対効果や成果をレビューし、取組を常に見直ししないといけない。
現地の責任
現地は掲げられた目標に対し、絶対に達成するという責任を負う。本部からの指示だけでなく、支店レベルでアイディアを出し合い、工夫しながら、成果を上げていく。競争意識をもってもらうよう、毎月の事故実績データはタイムリーに作成し、全員が確認できるようオープンにしておく。

全社目標、支店目標の決定
簡単・チャレンジ過ぎないように目標を設定する。
達成感が翌年のモチベーション維持に繋がる。
全社目標だけだと、「自分には関係ない」という意識になるため、支店、課、チーム等、細かい方が良いが、細かすぎると0点か100点になってしまうため、構成グループは50名程度が望ましい。

また、目標値をオーバーしてしまうと、とたんにモチベーションが下がる。これをどうするか。敗者復活するのか、オーバーしないようにペナルティを設けるのか。どちらかしかない。

アクションプランの作成
一気に沢山の活動を入れて、それをやることが目的になってはいけないし(あくまでも事故削減が目的)、アレルギー反応をおこす可能性があるので、徐々に取り入れたほうが望ましい。

スケジュール
なぜその月なのか(気象状況、新製品発売/キャンペーン、新人配車、全国交通安全、過去事故データ、ドライバーのモチベーション、等を考慮)
現場の負荷にならないよう、バランスよく決める。

トレーニング関係

同乗訓練
同乗訓練とは、ドライバーの運転する車両にマネージャーが同乗し、その行動(運転操作)や運転技術を観察するものである。更に運転操作の内容について、アドバイスを与え、防御的運転技術の問題点についてのフォローアップを行う。

目的
■ 潜在的ハイリスクドライバーの発見
■ 対象者および内容を絞った安全活動のピンポイント導入
■ 個別運転スキルのモニタリングを通じ、安全活動の成果を判定
■ 事故(違反)報告の徹底

方法
チェックリストを用いて
■ 車体・装備・車内状況のチェック
■ 運転チェック(項目別)
■ 運転評価

チェック終了後
■ 良い点、悪い点(2ストライク3ボール)
■ アドバイス(アドバイスマニュアルを見ながら)
■ 今後どの部分に注意すべきか(個別目標の設置)

結果は全て事務局に提出してもらい、個別運転能力データ、研修履歴データに落とし込む。
データを分析し、事故者のその後の成長、潜在的ハイリスク者の発見。全体的な傾向を通じて、具体的な安全対策の導入などに役立てる。

事故後コーチング
事故後コーチングは、事故に巻き込まれたドライバーをフォローアップするための手段である。目的はドライバーの責任をとがめることでもなく、責任の所在を明らかにすることでもなく、事故の再発を防止することである。

コーチングセッション
■ 事故日の精神的な状況
■ 業務スケジュール

事故後トレーニング
■ 実務(どのレベルまで)
■ ペナルティ
■ 自宅学習

マネージャー向けトレーニング
事故後コーチングや同乗訓練、および日常アドバイスの手法をトレーニング
E-learningでも対応可能だが、マネージャーとの面談も兼ねて、支店に訪問するのがベター。

ドライバー向けトレーニング
新入社員トレーニング

<失敗例>
薬業界では、新入社員に対し入社後3ヶ月間、製品教育を行なう。この間に安全運転教育を実施するが、どうしても時間があまり取れない。また、その人がどの位運転スキルがあるかどうか、把握するのが難しいため、入社前に最寄の教習所にて、練習と運転チェックを兼ねて行ってもらった。
しかしながら、免許取得の時期(2〜3月)と重なり、教習所にて練習することが難しいこと、評価する教習所がバラバラなため、評価もバラツキがあること、および、教習所でも責任をとりたくないという心理が働くことから、悪い点数はつけないという傾向があることが分かった。

新卒者向けトレーニングは、あまり早くやりすぎて、実際に運転するまでに、期間が空き過ぎると効果が薄れる。また、4月の入社したては学生気分が抜けきらず、トレーニングに対する姿勢に真剣さが足りないのも事実。従って配属前や配車前にやるのが、効果が高い。
実地訓練、座学訓練、適性検査はレインボーさんに任せるのが良いと思う。ただし、社内規定や会社の考え方、社員としての責任については、担当者が熱意をこめて、話す機会を設けるべき。その際、過去の新卒の事故データや傾向などを話すと、より身近に感じ効果が上がる。

一方受け入れる側の支店の今いる社員に対しては、新卒を受け入れるときまでに、安全に対する姿勢や、チームワークなど、非常に高いモラルで取り組んでいる姿勢を作るよう再確認する必要がある。なぜなら、研修中に、担当者が一生懸命説いても、実際の現場が全くやっていなければ、会社に対する不信感に変わり、より安全に対するモラルが低下する可能性がある。

中途入社に対しては、運転スキルや基本的考え方が既に備わっている者が多い。かといって手を抜くのではなく、良い機会なので初心に戻り、安全の大切さを確認する。この際、安全に対して極端に意識が低いものについては、周りへの悪影響を考慮し、配属までに矯正する。
<ブロークウィンドー理論>

実地訓練
ペーパードライバーなどは、基本的な運転技術を習得するためには、ある程度価値はあるが、ある程度運転歴があるものにとって、教習所の講習はあまり費用対効果が高いとはいえない。レインボーさんのような施設でやれれば良いが、なかなか集合させてやるのは難しいため、現地での最寄の教習所になってしまう。
ベテランドライバーが、若い人に混じって、教習所に行くことで精神的効果は多少あるかもしれない。
費用対効果を考えるなら、教習所より上司にトレーニングをしてもらった方が、効果は高い。

雪道講習
雪国に配属になった新卒者、または異動者に対しては、冬季に必ず、雪道トレーニングを実施し、雪道の怖さを体験してもらう。データとして、雪国での事故者は、他の県出身者が圧倒的に多い。雪道特有の上手い運転技術の取得は年月がかかるため、まずは怖さを知ってもらって、慎重な運転に徹してもらうのが一番。また、正月帰省して、正月明けに事故を起こすものが多い。これは正月ボケというか、雪のないところを運転したために、雪道運転テクニックを忘れてしまったことが大いに関係ある。従って長期休暇明けは十分に注意したい。

座学(ミーティング)
保険会社やその他企業のインストラクターまたは警察による講演会は、定期的にやってこそ意味がある。しかし、内容に変化がないと、受講者は退屈してしまうため、工夫が必要である。受講者が興味をもち、効果がある講義テーマは、新しくて受講者のメリットになる情報提供、KYT、ディスカッションである。一方的な話や、受講者が頭を使わない講義はやる意味があまりない。

なお、座学トレーニングは単発でやっても、事故抑止効果は一週間ももたない。従って、座学で決まったことや知ったことを日常の運転につなげるような、成果物(目標)を必ず作る必要がある。

E-learning
集合教育にかかる費用は莫大であり、また時間が取れないことから、最近はE−learningを使用した学習にシフトしつつある。費用対効果は抜群によく、また場所と時間を選ばないことから、受講者の評判も高い。
また、メリットとしては、本人が理解したかどうかが確認できる点にある。

500人くらいの社員が集合教育(5h)を1回やっただけでかかる全コスト(営業売上部分も含めて)は、約1700万円。これに対して、E-learningでは200万円位で済む。

ただし、完全に集合教育がE−learningに置き換わるとは考えにくく、集合教育の良さ(専門家による講義)を残すためにも、併用をおすすめしたい。

ハイリスクドライバー
ハイリスクドライバーとは、事故を起こす恐れがあるドライバー及び過去に事故が多発したドライバーを指す。指定されたハイリスクドライバーは別途定めたトレーニングを受け、事故の防止を図る。

・ 事故多発者
・ 入社1〜2年の社員(新卒者)
・ 運転歴の短いドライバー(特に合宿免許取得者)
・ 適性検査で問題のあったドライバー
・ 運転履歴に問題があるドライバー
・ 社内規定に従わないドライバー
・ 安全運転環境作りに非協力的なドライバー
・ アルコールまたは薬物を服用して事故を起こしたことがある者
・ 事故現場から逃亡し、法律により裁かれたことがある者
・ 免許の停止または取消しになった者

程度にもよるが、事故多発者は、レインボーさんに、基本的な部分から再教育してもらった方がよい。
傾向として、運転技術には問題ないが、基本的な考えが間違っているか、極端に広い担当エリアを持っている、または家庭に悩みを抱えているケースが多い。
こういった事故の原因(背景)は、必ず上司にフィードバックし、事故後コーチングのやり方を再度指導する。

事故違反社内ポイント制
事故や違反に応じて、運転停止やトレーニング、配置転換、解雇などのペナルティを実施する。
営業戦力が低下するが、事故再発率は非常に低い。

ペナルティはあくまでも最後の手法。会社が徹底的にトレーニングをし、それでも事故を起こした者に対してペナルティをするというスタンスでなければ、現場は納得しないし、逆にモラルダウンの悪影響がある。

また、ペナルティ制度を導入する際には、必ずアワード制度も導入すべきである。

アワード制度
無事故無違反を達成したドライバーに対し、賞状や賞金を渡すのが一般的だが、無事故無違反の期間や、賞品の額が必ず問題になる。特に賞金額は、多すぎても予算を圧迫するし、少なすぎても全く意味がない。そこで視点を変えて、受賞者の名誉という切り口で考えてみる。
特に最近の若い者は、お金より、名誉を喜ぶ傾向があり、全社員の前で、社長に受賞してもらうなど、社内的認知度をどうやって引き上げた方がよいかを考えた方が効果がある。

ドライバーのパフォーマンスレビュー
運転記録証明書、事故報告書

報告を徹底するために、年1回運転記録証明書を必ず取るのをおすすめする。しかしながら、プライバシーの要素が大きいため、全員のOKをもらわないといけない。
証明書の取扱い方法や、業務外の事故違反の扱いを決めて、納得してもらった上で証明書取り寄せを決定しなければならない。
また、新入社員については、証明書による運転歴の確認を行なうほか、入社後も年1回会社が取り寄せる旨、説明しておく。

情報提供・啓発活動

News
季節ごとの安全運転ニュースを定期的に発行する。

メルマガ、クイズ
Newsでは誰が読んだかが分からないため、メルマガで定期的に出すのも効果がある。最近は一人1台PCがあるため、ほぼ確実に本人に情報を届けられる(本人が開封したかどうかをチェックする機能もあり)、また簡易的なクイズやアンケートも可能なため、双方向の情報のやり取りが可能である。

ドライバーズガイド
ドライバーが知っておかなければならない情報をコンパクトにまとめ、車内に置いておく。事故対応マニュアルも含む。

ポスター
既製品でもよいが、手作りポスターを募集するのも効果がある。

データベース化
安全運転とは社員一人ひとりの、日々の努力によって達成できるものであるため、支店や課の単位ではなく、きめ細かく一人ひとり個別の管理をする必要がある。

最後に
安全への取組は、担当者一人、または本社のみでできるものではない。ドライバー一人ひとりの協力と、日々の努力でできるものである。従って、安全活動についても、机上論では絶対に失敗するし、現場が何を考えているかを十分把握した上で、対策を練らなくてはいけない。

仮にその対策が、あまり効果が上がらなかったとしても、問題ではない。次回その反省を活かし、より効果の高い対策を現場と一丸となってやればよいし、やり方は毎回変えることも大切である。
とにかく、粘り強く、安全活動を継続していくことが、一番の解決策である。

次に費用対効果について、総じて言うと、事故にかかるコストはご存知の通り非常に高額なため、安全運転活動の予算については、あまり絞らない方が良い。もちろん、無意味にお金を使うことは避けなければならないが、ドライバー1人あたり3万円/年もあれば、十分な活動ができる(100人いても300万円/年。事故が3件減ればペイできる)。昨今、予算縮小のあおりを受けて、教育費予算を減らす企業があるが、まったくもってナンセンスである(必ず事故が増えるので、結局は大幅なコスト増になる)。
トップが安全運転の意識を十分にもてば、予算もつく。しかし、担当者としては、経費を使うわけだから、事故削減の実績を必ずあげなければならない。そのためには、ただ単にトレーニングをやるのではなく、自社の傾向に基づいたトレーニングおよび対策を、専門的な知識を駆使しつつ、工夫しながらやるという責任が伴う。

ただし、社内でこのようにきめ細かい安全運転活動をするには、コストがかかりすぎる。従って、当社のような専門会社にアウトソーシングを依頼されたほうが、良い。

現在、車両管理アウトソーシングを提供する会社は他にもあるが、データ管理やスポット的な安全運転教育といった、下請け・部分的なアウトソーシングでは十分な対応を期待することは出来ない。また、当社はリース会社や保険会社系列のアウトソーシングとは違うので、車両におけるあらゆる関係会社との調整を行なうことが可能である。

車両管理、安全管理は、様々な関係会社と協力しながら、効果的に業務を行なっていく必要があるが、利害関係があると、思い切った活動が出来ない。安全管理は社員の方の安全と直結しているので、当社のように、しがらみがない業者を、クライアントの代理として上手く活用することで、事故削減などの大きなメリットが期待できるし、事実ヤンセンを始め多くのクライアントの事故を劇的に減少させている。

以 上



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