社会システム産業をめざして 「セキュリティ業務と交通安全教育」

セコム株式会社 調整業務室課長
渡辺 浩伸

神奈川大学工学部電機工学科卒業後、1977年日本警備保障に入社、83年セコム株式会社と社名変更、 オンラインのセキュリティシステムの運用を担う業務部門や技術部門、人材育成を担当する研修部を経て、 87年より調整業務室勤務、現在に至る。調整業務室では、「セキュリティドライビング基本マニュアル」を作成。 安全運転指導者(SDL)の立上げ、及びSDL社内制度化の中心的役割を果たし、現在はSDLの育成・指導、 「相手をも守る」ための考え方と運転行動であるSDの社内における啓蒙、社員のSD教育に従事している。 文筆には、1998年交通安全教育7月号「企業における若者への交通安全教育」がある。

お客様の安全のために、社員の運転教育を
 わが社は、安心、便利で快適というシステムをめざしています。 ところが、もしセコムの社員が業務中に事故を起こしてしまったら、 このサービスシステムは崩れてしまいます。お客様の安全のために、 まず自分自身が安全でなければなりません。そこで運転教育が、非常に重要になってきます。

セコムの交通安全体制5つの柱
 セコムの交通安全体制は、5つの柱からなっています。1つめは車両無事故表彰制度、 2つめがヒューマンエラーゼロ活動、3つめが車両事故ゼロ運動、4つめがSDL制度、 これが本日の話のメインになる教育を実施するための制度です。5つめが安全運転管理者です。  まず車両無事故表彰制度ですが、これは無事故走行の走行実績によって表彰を受ける制度です。 6万キロ、8万キロ、10万キロ他の表彰区分があり、10万キロ無事故を達成すると、 10万キロクラブ会員になります。現在、会員は約1,200名です。 これまでの最高は56万キロ無事故表彰です。  次にヒューマンエラーゼロ活動。これは車両交通安全だけではなく、 ヒューマンエラーに関するすべての活動に使っています。 ヒヤリハットを防止するための共有の資料として、どんなことがあったか、 それに対してどうすればいいと思ったか、などということを書いたチャレンジカードを作っています。 3つ目が、車両事故ゼロ運動です。セキュリティドライビングシートの掲示、 ・ヒヤリハット事案の発表、呼称運転の実行、セルフマインドコントロールの実行、 放置駐車・違法駐車撲滅の認識、安全運転技量向上の教育訓練の6項目から成り立っています。  

積極的に安全を作り出すセキュリティドライピング
 セキュリティドライビングは知識や技術だけではなく、行動を作る基となる考え方、 心が非常に大事だというのが、基本です。それが備わって初めてセキュリティサービスが可能になる、 ということです。 なぜセーフティドライブではなくセキュリティドライビングなのかとよく聞かれます。 セキュリティドライビングという言葉には、積極的に、力強く防衛運転をする、という意味が込められています。 相手をも守る運転、状況や相手の行動に期待しないで自ら安全を作り出す運転ということです。 各事業所には、セキュリティドライビング基本マニュアルがあります。 安全を作るためにどういう手順で車を動かしたらいいのか、 信号待ちの発進の仕方など具体的な行動が記してあります。 このマニュアルと整合した、車両添乗チェックリストも作っています。 このリストは、手順や細かい動作が網羅され訓練結果をチェックし指導や、 次の訓練をする人に申し送りをするために使っています。いつも安全行動をとれば事故はない、 というのがハインリッヒの法則です。従って安全行動の習慣化をめざすのが教育の目的、ということになります。 我々が教育の中で重視して指導しているのが、人間に備わっている、 「状況を決めつけて見る固定観念・自分本位に考える」といったヒューマンファクターです。 ヒューマンファクターが危険な行動につながることを認識して、 自分を取り戻すためのセルフマインドコントロールを実行し、 「いる・くる運転」をする。「いる・くる運転」は「だろう運転」の対向にある考え方ですが、 危険の存在を断定する考えを持ちなさいということです。この安全行動につながるというのがセキュリティドライビングの基本的な考え方で、これをもとに教育が実施されています。

危険体験を通して考える実習
 セコムには、全国で3カ所に研修所があり、年間約700名の社員を対象に運転教育が行われています。内容は、死角、サンキュー事故、右直事故、内外輪差、出合い頭事故、危険予測、夜間実習など、8割以上は実習です。たとえば、死角の教育では、運転席からどんな死角があるかという体験をして、どんな危険が生じるか、どのような安全行動をとればいいのか、ということを教えています。危険の体験をして、相手の立場に立って見る。自転車やバイクの立場からも理解させて、自分はどんな安全行動をとればいいのか、という体験を、1人ずつ行います。

近い立場から安全指導するSDL制度
 SDLはセキュリティドライビングライセンス取得者という意味で、運用開始が1990年です。現時点での対象会社はセコムと関連8社で、制度にある社員の人数は約350名です。SDLは、指導される社員の同僚または先輩、立場の近い上司です。このような関係だと、指導が受け入れられやすいし、SDLにとっては心に入り込んだ指導ができるということになります。 SDL認定までの課程ですが、まず人に教えることが好きだとか、無事故表彰実績とか、セキュリティに関する知識・技術レベルなどの条件を満たす社員の中から候補者が推薦されます。3泊4日の「SDL基礎養成研修」を受講、その後教育指導実習があり、所定のレベルに達したら認定されます。

安全運転管理者が活用する分析シート
 次に、安全運転管理者についてですが、安全運転管理者とSDLは事故防止に関しては共通点がありますので、職務の分担が表で明確に示されています。この中で使う資料を1つだけご紹介します。 自己分析表というシートで、当事者が、事故を起こしたときの焦りとか先入観などを思い出して、記入するようになっています。前方不注意とか無理な追い越し、確認不足、というような直接の現象を事故原因とせず、自分の考え方に不安仝行動のもととなった原因はなかったかを考えさせるための資料にします。こういったものを元にカウンセリングを行います。

交通安全教育専門施設の活用が効果的に
 又、一般社員を対象に外部の専門施設で教育を行うこともあります。交通教育センターレインボー埼玉さんでは、当社の東京本部から年間300名から400名の社員が安全運転研修を受講しています。外部教育機関のメリットとしては、新たな知識や考え方が学習でき、ここでしかできない体験ができることや、同じ目的で来ている他企業の人たちとの交流などがあります。98年は、栃木のアクティブセーフティトレーニングパークモテギさんで4回目のセコム安全運転競技会全国大会を開催しました。各地で行った予選会には選抜された1200名が参加、この中から選ばれた110名の選手が、法規走行や、スラローム、狭路通過などの競技を行いました。大会は競技部門と、勉強のための体験部門で構成されました。

さらに交通安全教育の浸透をめざして
以上のような教育の結果、わが社の事故発生率は、90年から下がり続けています。単独事故も、相互事故と加害事故も90年を境にして、下降線にあります。ただし我々としては、事故率が減ったとか、増えたとかだけの結果だけを気にするのではなく、事故をなくすための努力を続けることに専念すべきだと考えています。今後の課題としては、現在の活動の徹底を継続し、先ほど申し上げた交通安全5つの柱の活動を、本当に浸透するまで続けることです。それから交通安全体制の仕組みの向上、新たなツールや考え方の導入、また、たとえばSDLの立上げ時期には自動車学校の方にフォローしていただきましたし、マニュアル作成には、交通教育センターレインボーさんの考え方を参考にさせていただきました。今後もこういった融合を図っていくことも検討材料です。さらに、SDLの輪を広げるために、人材をもっと増やしていかなければならないと考えています。


SD教育の基本となる考え方



 −安全行動の習慣化−
上記の図式はハインリッヒの1:29:300の法則に不安全行動を付け足したもので、 「不安全行動をとっていても事故になるとは限らないが、とり続ける限り、確率的にいつかは事故になる。 よって事故にならないためには、常に安全行動をとる必要がある」ことを表現している 。



参考資料:2001トラフィック・セーフティ・フォーラム報告書より抜粋

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